プロミナー一眼

その後の追加テスト・・・  テスト1(2.21)   テスト2(3.01)   テスト3(3.15)   テスト4(3.22)

 「スコープデジ一眼」撮影のテスト報告           根本信二     2009.01.12 記入

野鳥撮影機材の手軽さから、「デジスコ撮影」もしましたが、シャッターチャンスの問題(時間差が大きい)ので、デジ一眼による撮影に戻りました。しかしながら、機材の重量に閉口することもあります。何とか「デジスコ」並みの重量で、デジ一眼の撮影が出来ないものか思案しておりました。今回、フィルム撮影時に使用していた「アタッチメントMC」をデジ一眼に繋げて、どの程度の映像が得られるかテストしてみました。テスト試写の一部を当会HPに公開しましたので参考にして下さい。

1、使用機材 ニコンED78フィールドスコープ(直視型)、カメラアタッチメントMC、デジ一眼ニコンD70(本体)、ニコンマグニファイヤーDG−2、三脚ベルボンSuper Ace U、 雲台ジッツオG2270平型、ビデオ雲台ジッツオG2380 マンフロットカメラプレート501PL、UN製UNP-5606デラックスストレートバー等(機材映像参照)

2、改造点 D70はケーブルレリーズ並びにワイヤーレリーズの使用が出来ないので、エツミ製コンパクト用シャッターボタンを改造して、ケーブルレリーズをアクセサリーシューに取り付けました。スコープ全体のバランスを取るため、UN製UNP-5606デラックスストレートバー先端にスコープを固定し、カメラアタッチメントMC部分を木片加工した「ヒップサポート」でデジ一眼本体側の重量を支持して、振動を軽減しました。更に、マンフロットカメラプレートをストレートバーに固定し、固定金具を雲台に装着して全体のバランスが取れるようにしました。

3、予備知識 テスト使用のスコープED78にカメラアタッチメントMCを繋げると焦点距離が1000ミリメートルになり、F値は約F13になります。しかしデジ一眼装着の場合、カメラ本体の露出計が使えません。(新型のFSA−L1ならば制約はあるものの露出計が使えます。)従って、「Mモード」での撮影になり、単体露出計の使用若しくは、経験則での撮影になります。

D70は画像素子CCDの大きさがAPC−Cサイズなので、35ミリ版の1,5倍の1500ミリメートル換算の焦点距離になります。D70のISO感度は200〜1600です。カメラの手持ち撮影手振れ限界シャッタースピード(以下S/S)は、おおよそ1/(焦点距離)秒なので、手押しの場合S/S1/10001/1600秒位になるように、ISO感度を随時変化させて設定しました。ちなみに、ED78の最短合焦距離は5メートルです。

4、まとめ はじめは、撮影条件の良い日中の晴天順光からテストしました。ISO800で、1/1000秒前後の条件になるでしょうか。じっとしている鳥であれば、マグニファイヤーを使い、鳥の眼にピントを合わせ、三脚の揺れが止まってから、自作ワイヤーレリーズでそっとシャッターを切ります。カワセミやモズなど、止まる場所が決まっていれば、マンフロット社製ロングレンズサポートで、カメラ本体と三脚を繋げて防振対策をしておくのもかなり有効です。

枝先で動き回る鳥の場合は、左手でスコープ本体のフォーカスリングを小刻みに動かし、ファインダー焦点面でピントの山(一番はっきり見えるところ)をみつけ、右手でそっとシャッターを切ります。スコープ本体胴回りのフォーカスリング方式(ニコンやスワロフスキー)のほうが扱い易い感じがします。ビデオ雲台の場合は「デジスコ」同様に扱えば問題がありませんが、カメラ雲台の場合は、水平、垂直方向のネジを軽く締めて、ビデオ雲台の動きに近づけておけば、さほどの問題もありません。35ミリ版で1000ミリ〜1500ミリ換算の焦点距離ですので、出来るだけ速いS/Sになるように、ISO感度を選択することがコツです。S/Sが遅くてブレのある画像であれば、ISO感度を上げて撮影します。ただここで問題になるのが、ISO感度を上げると画面がざらついて、画質が悪くなる点です。もしも速いS/Sが得られないようでしたら、少し暗い画像で記録し、加工ソフトで明るい画像にするのも方法の一つです。使用の三脚も3段伸縮式なら背を低く2段にすることでブレ対策になります。車内撮影の場合、自分自身の重心移動で車が揺れますので、車の揺れが止まってから撮影します。

頭上で飛翔する鳥は、思い切って手持ちで撮影します。雲台に乗せての撮影には機材によって、垂直方向の角度に限界があります。ダメもとの気持ちで、鳥姿を追い撮影します。このとき、両目を開けて撮影します。左目で飛んでいる鳥を追うと、右目のカメラファインダーに鳥姿が入ってきます。左目が1倍で右目が20倍くらいの双眼鏡だと思えばいいでしょう。慣れてくると、結構速く導入出来ます。

最新のデジ一眼は、ISO感度も3200〜6400が常用で使用出来ます。モニターでの鑑賞だけであれば十分楽しめますし、ピントをしっかり掴めればプリントしても十分鑑賞に耐えられると思います。ここで上達のコツは、「画像のプロパティ」機能を利用して、撮影済の画像のISO感度とS/Sやホワイトバランスの確認をすることです。同じ機材を使っても、初心者と慣れた方ではブレのS/Sの限界が違います。自分の機材で、どれ位のS/Sであれば、どの程度の歩留まりかを確認することです。また、レリーズ使用の場合より、手押し撮影で連写した場合、歩留まりが上がることも時たまありますが、やはりこれも慣れが必要です。

当然のことながらMF(マニュアルフォーカス)ですので、カメラの機種によってはピントの掴み易いマット(ファインダー画面)とそうでないものとあるでしょう。やはりファインダー倍率の高い機種が有利です。ニコン製カメラであれば、アダプターのマウント(カメラと繋げる金具)の問題はありませんが、他社製のカメラの場合、中間に入れるマウント(ニコンと他社を繋ぐ金具)が必要です。

カメラ本体に「防振機能」のある機種のテストしておりませんが、たぶん「防振機能」をOFFにして撮影しないと無理ではないかと想像します。

サンプル映像データ

共通データ 仕上がり設定 標準

      諧調補正   オート

      彩度設定   標準

      輪郭強調   オート

タイトル

画質

シャッター速度

ISO感度

WB

備考

A

ユリカモメ牛久沼001

L、F

1/640

400

晴天

B

スズメ牛久沼001

L、F

1/1250

800

晴天

車内

C

オオタカ稲波001

L、F

1/1000

800

晴天

手持ち

D

ジョウビタキ甘田干拓001

L、F

1/1600

800

晴天

手持ち

E

ジョウビタキ浮島001

L、F

1/1250

800

晴天

F

チュウヒ浮島001

L、F

1/1250

1000

晴天

G

アオジ大羽谷津001

L、F

1/250

1600

晴天日陰

H

キジバト北竜台公園001

L、F

1/640

1000

晴天

I

ムクドリ牛久沼001

L、F

1/640

800

晴天

G

ジョウビタキ大羽谷津001

Basic

1/640

800

晴天

K

カンムリカイツブリ牛久沼001

Basic

1/1000

800

晴天

車内

L

ヒドリガモ牛久沼001

Basic

1/1000

1600

晴天

車内

M

ジョウビタキ浮島001

L、F

1/2000

1600

晴天

N

ミサゴ浮島001

L、F

1/2000

1600

晴天

O

ホオジロ大羽谷津001

L、F

1/800

800

晴天

P

キリアイ浮島001

L、F

1/1000

1000

晴天

車内

Q

キリアイ浮島002

L、F

1/1000

1000

晴天

車内

R

キリアイ浮島003

L、F

1/1000

1000

晴天

車内

S

アオサギ本新001

L、F

1/1000

1000

曇天

車内

T

アオサギ本新002

L、F

1/1000

1000

曇天

車内

U

モズ浮島001

L、F

1/640

1600

曇天

車内

 

A B C D E F
G H I J K L
M N O P Q R
S T U
  『映像画素数=原画は大きさ3,008×2,000 サイズ2.5MB(SとU)ですが、HPの容量の問題で(A〜R&T)はResizeというソフトで、大きさ1,700×1,130 サイズ500KB以下におさえてアップしています。もっと細かく見たいと言う人は根本さんにCDを借りて確認して参考にして下さい』

 

サンプル映像の解説

 サンプル映像は、カメラ(D70)の設定を標準的な内容にしてあります。しかし、「標準」や「オート」の内容はカメラメーカーによっても差がありますし、同じメーカーでも機種によっても差があります。今回は、パソコンに転送して、多少加工(レタッチ)することを前提に「標準」、「オート」に設定しました。画質、記録サイズ設定は標準的なプリントアウトを前提に「L(ラージ)、F(ファイン)」にしましたが、一部の映像は構図の関係で露出が難しいと判断し、後で現像作業が出来る「RAW(ロウ)+BASIC(ベイシック)」で記録しましたので、サンプルプリントは「L,B(L,Fの約1/4記録サイズ)」です。ホワイトバランス(WB)は、「オート」設定にせず、天候と撮影場所を判断し、「晴天」、「曇天」、「晴天日陰」に設定しました。今回は、「早朝」と「夕暮れ」の場面がありませんので、選択設定に悩むことはありませんでしたが、迷ったときは「オート」で撮影しておけばよいでしょう。(厳密に言えば、「RAW」で撮影しておいて、「現像ソフト」で「色温度」を設定すればよい。)

 ちなみに、全てのサンプル映像が原版そのままで、構図(クロップ加工)も色彩等の変換補正もしてありません。(プリント版は長辺が少し切れる。)

@    ユリカモメ牛久沼001 ISO感度400で、S/S1/640では撮影ブレのコマが多かったです。三脚を最長に伸ばしての撮影でしたので、さらにブレの原因が多かったのでしょう。このコマは、構図を水溜りに固定して、鳥が来るのを待ち、ワイヤーレリーズで撮影したものです。ところで、デジカメで白い鳥を撮影する難しさは、「しろとび」を出来るだけおさえることです。カメラ本体の「ヒストグラム」や「ハイライト表示」機能を使い、露出補正します。

A    スズメ牛久沼001 @とほぼ同じ光条件でしたので、ISO800、1/1250での撮影でした。ただ、スズメの動きが速いのでブレないよう、ISO感度を一段上げ、S/Sを速くしました。

B    オオタカ稲波001 地上の鳥を撮影していると、上空が騒がしくなってきました。車中からでは撮影出来ませんでしたので、「スコープ一眼」本体を雲台から取り外し、手持ちで撮影を始めました。左手でピントを合わせながら、右手親指でS/Sを変化させ、右手人差し指でシャッターを切り続けました。沢山撮影しましたが、ピントの合ったコマは25%くらいでしょうか。

C    ジョウビタキ甘田干拓001 助手席側の鳥を撮影していると、突然運転席側に姿を見せたので、速やかに雲台から「スコープ一眼」本体を取り外し、ドアミラーを支点に手持ち撮影しました。4コマすべてブレが許容内でした。S/Sが速ければ歩留まりが高まります。

D    ジョウビタキ浮島001 Cに似た条件ですが、こちらは三脚、レリーズでの撮影です。

E    チュウヒ浮島001 カメラ雲台のネジを緩めに固定し、ビデオ雲台のようにして撮影しました。一脚撮影に近い条件です。左手でひたすらピントを合わせ続け、手押しでシャッターを切り続けます。25%くらいの歩留まりで撮影出来ました。

F    アオジ大羽谷津001 「スコープ一眼」にとって一番難しい条件です。日陰で直接太陽光が差しませんので、ISO1600に設定しても、1/250が精一杯で、撮影ブレよりも被写体ブレ(アオジの動きが活発で)のコマが多い結果でした。最短距離5メートルに近い撮影でしたので、動く鳥を入れて構図を決め、振動が止まるのを待ってレリーズする作業が大変でした。

G    キジバト北竜台公園001 カメラ雲台の垂直方向ぎりぎりの角度の撮影でした。「枝かぶり」の構図にならない位置を捜すのが大変なだけで、「デジスコ」撮影とさほど変わらない条件でした。このような構図はAF(オートフォーカス)が苦手とする場面ですが、MF(マニュアルフォーカス)なので、「鳥のいい仕草」のシーンでレリーズ出来るのが利点です。

H    ムクドリ牛久沼001 画質重視でISO800に押さえ、レリーズ使用での撮影です。採餌中で、動きが活発で思った構図で撮影が出来ませんでした。それでも、「デジスコ」と比べれば、シャッターチャンスは多いと思います。

I    ジョウビタキ大羽谷津001 ファインダーに鳥を入れ構図を決めようと思っていたところ、こどもが走って来ました。飛び去る前のとりあえずの撮影でしたが、シャッターチャンスは「デジスコ」よりあると感じました。

J    カンムリカイツブリ牛久沼001

K    ヒドリガモ牛久沼001 J映像の水面の色を比較してみると、絵の印象が変わってきます。シャッタースピードは同じですが、ISO感度を一段変えてあります。このようなことからも、露出補正した映像を複数撮影しておいて、その時のイメージに合ったコマを選択することが必要です。

L    ジョウビタキ浮島001 ISO最高感度1600で、S/S 2000での撮影コマです。ISO1600でも、撮影構図によっては、画像の荒さが目立たないようです。

M    ミサゴ浮島001 このようなシーンは、一直線な飛翔経路ですので、ファインダーの中心付近でピントを合わせたかったのですが、ピントの比較的良かったのはこのコマだけでした。

N    ホオジロ大羽谷津001 鳴き声に合わせてシャッターを切りました。「デジスコ」に比べ、タイムラグ(撮影時間差)が小さな「スコープ一眼」の方がチャンスは多いでしょう。

O    キリアイ浮島001

P    キリアイ浮島002

Q    キリアイ浮島003 OPと同一個体で、たまたま画面奥からこちらへ向かって来た場面の撮影です。車中から撮影の難しさは、鳥が離れて行っても、直ぐに追いかけられないことです。

R    アオサギ本新001

S    アオサギ本新002 (Rと同一個体)小雨降る場面で、露出の難しいシーンでした。この場面も、奥からこちらへ向かって来たので、画面一杯の構図になってしまいました。

? モズ浮島001 小雨が降ってきた光の少ない場面でした。カメラ本体の「ヒストグラム」を見て露出を決定しましたが、少しアンダー(露出不足)気味でした。S/Sを遅くすると、カメラブレ、被写体ブレの可能性が大きくなりますので、パソコンの加工ソフトで少し明るくすることで解決します。